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柿食う客『Wannabe』レポート&インタビュー

BeSeTo演劇祭もいよいよ開催まで一週間を切りました。今回のフェスティバルでトップバッターをつとめる日本の柿喰う客の稽古場にお邪魔して来ました。

kaki1.jpg柿喰う客は、今回のBeSeTo演劇祭のなかの若手演劇人の国際共同制作プログラムとして、韓国・中国から同世代の俳優を招き、6月15日より小竹向原のアトリエ春風舎で稽古をしています。公演は6月29日(火)から同・アトリエ春風舎で上演されます。

今日は3時間ほど稽古を見学させて頂いたのですが、驚いたのは現場に中韓の通訳さんがいないこと。(後から聞いた話、片言でも直接話し合った方が通じ合うからと、通訳さんを週二日程度でいいや、と断ったそうです。すごい。)コミュニケーションはお互いもっぱら英語で行い、さらには伝えたいことを日本人同士、韓国人同士、あるいは中国人同士で、それぞれの自国の言語や文化状況を確認し合いながら、台本を読み、セリフに手を入れ、ときに英語を、例えば中国人俳優が中国語に直し、それをその場で日本人俳優が覚えて喋る、というような流れで稽古は少しずつ進行していました。

kaki2.jpg印象に残ったのは、基本的な台本は演出家の中屋敷さんが書いて、通訳さんに直して貰ったものが配布されているのですが、先にも書いたようんに現場でどんどんお互いの文脈や語学力にあわせて台本を書き変えていること。台本を書きかえるというか、相手役に伝えたいことをその場で俳優が自国語や片言の英語でどんどん即興的に、言葉を足したり引いたりしながら演技し、それに対して中屋敷さんがシーンを返しながら演出的な要求を伝えて、少しずつ作品が形作られて行くこと。


kaki3.jpg実際に日中韓の若い演劇人がお互い懸命にコミュニケーションを取りながら、通じたり、通じ合わなかったりしながら、お互いの関係を築き上げていくのと同時進行するように、作品そのものがまた同じようにして作り上げられていくさまが傍で見ていてとても面白かったです。

あともう一つ印象に残ったのは、どんどん稽古場でお互いの国の言葉を覚えていること。休憩時間ともなれば、本当に「国際交流」なんて堅苦しい言葉ではおさまりがつかないような若者たちのお喋りが延々と続いて、笑い声の絶えない、とても楽しい稽古場でした。

稽古終了後、劇作家・演出家である中屋敷さんにお話を聞きました。

+++

BeSeTo+ 矢野(以下矢野):今回のBeSeTo演劇祭では日中韓三ヶ国共同作品に挑戦されていますが、今、中屋敷さんが感じられている共同制作の面白さ、難しさがありましたら教えてください。

中屋敷氏:実は今、現場では大変な事態が起きていて、実はまったく「大変じゃない」んです。あれだけ先輩から共同制作の大変さを聞いていて、緊張していたのだけれど、スタジオに入ってからまったく緊張していない。空港でお迎えする時がいちばん緊張したくらいで(笑)

空港で「ノリ!」と声をかけられてからずっと、僕はみんなからノリと呼ばれているんですけれど、作品を作るということについてはまったく難しさを感じていない、そのことが逆に怖いくらい。難しさを感じて、その難しさをどうクリアしたか、みたいなことを話したいのだけれど、作品を作る上で難しさを感じていないので、それが怖いです。

楽しさは、国際交流だからといって普段と特別変わることはないです。難しさは、強いて言えば、語学力くらいかな。だけどみんな片言で英語が喋れるし、年齢もだいたい同じだし。

ただ、出会い方が良かったのかな、と思うのは、韓国のメンバーとは昔から友だちなんです。韓国のメンバーとは二年前にフランスで出会い、そこで友だちになった。で、それからずっと、いつか日韓でお芝居を作りたいねという話をしていた。そこに若い中国の人たちも混ざったら面白いねという話になって。

僕ら若いメンバーが、最初に自国ではなく外国(フランス)で出会った。という最初のノリみたいなものがずっとあることがよかったのかなと思います。


矢野:今回の作品は『Wannabe』というタイトルですが、俳優の役名が実名だったり、拝見していて、それぞれの俳優の性格や語学力なども含めたパーソナリティを100%活かしていくような演出、広がりのある舞台設定がとても印象に残りました。もしよろしければ簡単に今回の舞台の設定と、物語のモチーフのようなものがありましたら教えてください。

中屋敷氏:実はwannabeというのは英語の蔑称で、「なりたがり」という意味なんです。だからこれはアンチな意味で使っているのだけれど、とある海外の国で、大学とかのある規模の都市、英語が母国語ではないけれど英語が使えれば生活が出来るという、日本でも中国でも韓国でもない、資本主義圏のある国。という設定なのですが、劇中では、such a foreign countory という言葉しか出てこないんです。

それは、自分たちがどこの国に住んでいるのかは問題でなくて、設定としてはアジア人が集まって住んでいるとあるマンションでの出来事。それを、海外に住んでるけど、けっきょくはお互い国際人ぶってるけどアジア人じゃないか、という舞台設定を用いて、最終的には国の歴史ではなくあなただけの個人の歴史にしか価値はない、そんなところまで飛ばしたかった。

演劇の現場って、そういうものだと思うんです。such a foreign countory でしかなくて、いま・そこにいるあなたにしか価値はない。僕ら柿喰う客も、別に東京にいてもホームな感じはしないし、これは海外公演などをやっていて意識するようになったことなのだけれども、場所を味方につけるということと、場所に寄り掛かるというのはぜんぜん別のことだと思います。どこにいっても舞台上で繰り広げらる世界は、たとえそこがイスタンブールであっても、柿喰う客シアターカンパニーの劇世界、俳優の演技のその強度を保ちたいということは考えています。客席を無視するのではなく、客席は客席の文脈がそのままあっていいし、そこを侵食するつもりはないです。


矢野:例えば、舞台を客席と一緒に作るという感覚はありますか?

中屋敷氏:それはあります。それはこちらの作法として、設計図を書くというか、反証可能性を検討するというか、演劇的・芸術的な価値がどうこうではなくて、何が面白くて何が面白くないか、という理論武装はしています。起承転結とか、そんな簡単なものじゃないんだけれど、例えば少人数のシーンは多人数のシーンより集中力が必要なので物理的な時間を短くする、とか、そういう時間の計算はすごくしています。

今回に関していえば、現場の雰囲気をこういうふうにしたい、このソファのあるこの空間をこうしたいという欲求はほぼ実現できていると思います。

世界単位で出会ったら、韓国人ともフランスで例えば竹島問題の話なんかもしたんだけれど、残念ながらぜんぜん盛り上がらなかった(笑)

むしろ、フランスに来てアジア人に出会えたことの方が嬉しかった。

世界単位で考えると、三ヶ国の国際共同といっても本当に大きな世界の中ではたったの三ヶ国でしかない、という視点が示せるといいなと思いました。

なんでこれまで友だちになれなかったのかわからない。共通の話題も多いし、お互い知ってる有名人も多いし、友だちになりたい。

お互いのことを理解しよう、お互いの違いを認識し合おう、というのはむしろ逆に壁があることを前提にしている気がしていて、ただ単純に I wannabe be your friend. でいいんじゃないか。相手の文化を理解するとか、そういうことじゃないんじゃないか。どうも三ヶ国語とか、違いを意識することはまったくなくて、俳優同士の国の違いというよりも、あ、そこは笑っちゃうんだな、というような、そういうところを拾い上げていきたいです。

こういう言葉を僕らは子供のころにもっとシンプルな言葉で世界はひとつ、みたいな言葉で聞いていたんだと思うんですけれど、大人になるに連れて難しい言葉で括られるようになっていく。

演劇は目の前の人と向き合う仕事なので、もっとシンプルにただ、着ているシャツが変なシャツだったら「それ変だよ!」ってことを指摘し合えるような距離を作りたい。そう思っています。


矢野:僕もそれほど本数を見ているわけではないのですが、本作について、普段の柿喰う客の作風とはずいぶんと違うように感じました。作品作りにおいて、今回特別に意識している違いはありますか。違わないとしたら何が違わないか教えてください。

中屋敷氏:お客様は違いを意識すると思いますが、僕はまったく変わっている意識はないです。それはたぶん現場の雰囲気が同じだからだと思う。雑談が多いというか、それは共演者に対してお互い興味を持つ、ということなんですね。演出家としての自分が作品の完成型というような幻想を持ってここにいるのではなくて、俳優がみんな、各々のなかに答えを持たないで、お互いに、ここどうする? というようなミーティングが出来る「場」を作ることはいつも心がけています。

柿喰う客は脚本家の権威というのがものすごく弱い現場なんです。それは僕自身が自分で書いた台本を自分で足蹴にするからなんですが(笑)、台本は台本で完成しているんだけれど、それをどう扱うか。台本はサッカーのボールとか、バスケットボールのボールと同じようなもので、ボールに動かされちゃいけない。チームがボールを動かさなきゃいけない。台本はあるんだけれど、台本を使ってチームがコミュニケーションしなきゃならない。そういう現場の空気はいつもと同じ柿食う客の空気が作れていると思います。今回については、いつもと違って口語体なのと、多少の歪み、揺らぎを許容出来るものになっているという違いはあると思いますけれども。

柿喰う客には制約が多いんですが、客演さんなんかだと制約を不自由に感じる人が多いのに対して、柿のメンバーはその制約を自由ととらえるんですね。それはルールだから。

その意味で、舞台の上でのルールの決め方、ルールを作る過程が同じなので、いつもと同じ現場感覚で作っています。そのルールを俳優たちと共有することもうまく出来ていると思います。演出プランが正しいとか面白いではなく、このルールは現場を面白くする、ということがみんなと共有できている。


矢野:だいぶ今までの話の中にも出てきてしまったと思うんですけれども、共同作業の中で、日中韓それぞれの文化の違い、共通点など気付いたことはありますか。柿喰う客は、ユニークな文体を共有している劇団らしい劇団活動を行う一方で、劇団員だけでなく他に多くの客演俳優を招いての公演も行っていますが、劇団員だけで行う稽古と、日本のフリーであったり他劇団に所属している俳優との共同作業、今回の国際共同作業とについて、何か違いがありましたら教えてください。

中屋敷氏:違いについては本当に、けっきょく文化の「違い」ということに僕自身あまり興味がなかったので、聞かないし、知らない。たとえ相手に聞いても、例えば○○という漫画家知ってる?って聞いても、相手がそれを知らなかったら知らないでそれ以上どうこうというのがない。別に知らないならそれでいいや、っていう感じで、逆に、共通の話題や、それこそ舞台上で髪形をどうするかとか女優陣はそれだけでみんなすごく盛り上がっていましたし、恋人はいるかとか、共通の話題やシチュエーションを探していったら、そのことで現場が盛り上がった。

すごいのは今回の現場が、劇団員だけでやるときとまったく違わないということ。つい先日客演ばかり女優だけの芝居をしたんですが、そのときも同じだったんだけど、今回の座組みは柿のメンバーだけでやるときと違いがない。愛かな。愛だと思います。自己顕示欲とか、何かに対する怒りや悲しみではない、演劇をやるうえで大事なのは、愛のメッセージだけでいいんじゃないかと思っている。人への感謝、演劇への感謝、モノへの感謝、あなたと出会えたことへの感謝、そのエネルギーでしか芝居を作らないようになっていて、柿のメンバーにもお芝居するうえで何が大事かって聞いたら、みんな愛って答えると思う。そんな恐れのなさ、確信の強さについては今回の現場も共通していると思います。


矢野:いずれにしてもいいチームが作れているということですね。

中屋敷氏:そうですね。今回も、テキストよりもまずワークショップだけを一週間やった。稽古の序盤は半分以上それに割いてて、ワークショップが上手くいかないとテキストを渡さないつもりでいた。それが今回は予定より早く渡せた、というか生まれて初めてというくらい、俳優に要求される前に自分からテキストを渡してしまった(笑)

いつも要求しているのは、空気を読むということではなくて、空気なんか読まなくていい。自分と相手との間にある空気なんか無くしてしまって、すぐに、お互いにタッチ出来るダイレクトな関係、お互いの肉体を感じ合うような、オープンな状態というのとも違うんだけれど、意識の解放というか。かといって、緊張はしていなくて、緩んでいるのでもなくて。

稽古の序盤でやっていたシアターゲームでもそうなんだけど、ミスをしたときに「おいチャイニーズ!」とか、即座に言い合える関係を、ワークショップでそういう関係が出来てからテキストを渡すんですが、まず、柿喰う客のメンバーが空気なんか読まずに飛び込んでいく。そこに中韓の俳優も飛び込んできてくれているという感じです。


矢野:ずばり今回の作品の見どころは?

中屋敷氏:たぶん、これは、本当にそうなんですけれど、今のところ僕は他の人にもそう言われているしそういう勢いを作ってもいるんですけれど、みなさん出演者11人のことをみんな好きになれると思います(笑)。こんなに舞台で観ていて愛おしく思える11人はなかなか日本では観れない(笑)。自分のことはどうでもよくって、相手とどんなフレンドシップを作るか。どうコミュニケートするかに必死になってるし、自己表現とか誰も要らない状態になっている。僕自身が本当にみんなのことが可愛いくて仕方がない。それは中屋敷個人のセンスの問題ではなく、みんな生き生きしている。赤ん坊が生き生きしているように。のびのびしている。そこは観ていて気持ちいいと思います。

+++

稽古を見た印象にも書きましたが、共同制作の現場を築き上げていく仕方と作品の在り方が非常にナチュラルで、等身大というか、肩肘を張らない共同作業の在り方にとても好感を持ちました。

11名の俳優と演出家すべてが20歳代という非常に若い世代の企画で、これからの「国際交流」「国際共同制作」の在り方自体を変えていくようなエネルギッシュな創作現場でした。上演がとても楽しみです。

アトリエ春風舎での上演は、6/29(火)~7/19(月・祝)まで。そのあと7/24(土)・25(日)には鳥取公演もあります。

皆さんもどうぞ、お楽しみに。


取材・構成/BeSeTo+実行委員・矢野靖人(shelf)



中屋敷氏中屋敷法仁
演出家。劇作家。劇団「柿喰う客」代表。人間存在/現代社会を躍動感溢れる身体表現で冷笑的に描き出す。虚構性の強い演技法/発話法を操り、「反・現代口語演劇」の旗手として注目される。高校時代に劇作家・畑澤聖悟氏に劇作を師事。演劇活動を始める。在学中に発表した『贋作マクベス』で、全国高等学校演劇大会で最優秀創作脚本賞を受賞。04年、青山学院大学在学中に「柿喰う客」の活動を開始。全作品の脚本・演出を手がけ、精力的な公 演活動を行う。旗揚げ3年にして、年間動員5,000人を達成。07年、桜美林大学芸術祭(GALA)交流公演の演出家に抜擢され、学生とともに『誰も笑わない「検察官」』を発表。同年『親兄弟にバレる』でフジテレビ「お台場SHOW-GEKI城」に最年少演出家として参加。08年、『恋人としては無理』で「フランシュコンテ国際学生演劇祭」(フランス・ブザンソン)に招聘される。現地で劇団「連劇美」(韓国)演出家イ・ソングォン氏と出会い感銘を受ける。帰国後には日本演出者協会の主催するソン・ジェンチェク氏のWSに参加する。翌09年には同作品で国内五都市ツアーを行う。また、吉本興業やプロデュース公演などの外部演出にも積極的に取り組む。09年末より、三重県文化会館におけるレジデンス・アーティストとしての事業が開始予定。

Tag :  国際 Wannabe 中屋敷法仁 |

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